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Nossy(のっし―) です。


今回も前回に続いてプリンスのアルバム紹介です。


プリンス8枚目のアルバムである、


『Parade』(パレ―ド)です



このモノトーンの美しいジャケットのアルバムは

内容も凄まじく革新的かつ美しいです。


ビ―トルズでいう所の『リボルバ―』にあたる様なアルバムだと思います。


当時も今も「新しい!」と思える様な曲達が

淡々と連発されていく感じがソックリです。



一応このアルバムは、

【Under The Cherry Moon】というプリンス主演映画第2弾のサウンドトラック的役割もあるのですが、


今回は【Purple Rain】の様にヒットせず、


それどころか、ゴ―ルデンラズベリ―賞(最低映画賞)まで獲得してしまう始末。


実は私、この映画を全部きちんと観た事が無いんですが、

断編的には観た事はあって、


ちょっと観る気にさせてくれません。


全編モノクロの映画で、舞台はフランス。

貴族と貴婦人の物語という感じの


兎に角、


『なぜそうなった??』




みたいな雰囲気です。


映像として映るプリンスは流石に全盛期なのでイキイキとしてカッコイイのですが、

予告編を観ただけでもB級映画だとわかってしまう様な感じ。


マイケル·ジャクソンの【Moonwalker】にしてもそうなのですが、


なぜミュ―ジシャンの人の創る脚本はこうも謎なモノになるのかという(笑)


【Purple Rain】も原案はプリンスによるモノなのですが、


あれはプリンスの実体験を中心に装飾した様なモノでしたから

現実味があったんですね。



いつかはちゃんと全部観てみようとは思うのですが.....



しかし、アルバムのほうはとてつもない名作です。

映画に合わせてフランス趣味が散りばめられているのですが、


音として聴く限りは何だか異国情緒あふれるイイ感じ。


革新性もマックス。今聴いても非常に先進的なアルバムです。


当のプリンスは映画が大失敗し、アルバムの売り上げも前回より更に落ち込んだからなのか、


本作を完全に駄作扱いしていた様なんですが、


いや~、流石のプリンスも自分の事は客観的に捉える事が難しいのでしょうか。


このアルバムは誰が何と云おうと大傑作です


それでは曲の紹介いってみましょう。



●●曲紹介●●


①「Christopher Trasy's Parade」


...冒頭、摩訶不思議なタイコの音が突撃して来ます。

そこから一気に夢の世界へ突入します。


このアルバムは40分と収録時間も短めですが、

各曲がメドレ―の様にスイスイ飛び出しては

流れていく構成となっています。



重たい曲は無く、軽めの小品の集合体の様なアルバムなんですが、

そのひとつひとつがとんでもなく新しい。



『こんなポップスの形が有り得るのか!』


とビックリさせられます。



しかも、軽いので何度も繰り返して聴ける部分も◎です。


この曲ははじまりに相応しいメロディの良い
マ―チ風の曲。


まるで「マジカル·ミステリ―·ツア―」みたいなノリの曲ですね。


PRINCE 『Christopher Tracy's Parade』-YouTube

②「New Position」


...このアルバムのもうひとつの特徴、

それは


【マイナスの美学】です



音数は少なめなんですが、ものすごくグル―ヴィ―なんですね。


まさしく、ファンクです。


プリンスの創るメロディは、通常で云う所の

『メロディが良い』というのとは違って、


バックのリフレインにあわせて何となくの

ラインだったりする事も多いんですが、


その感覚がメチャメチャ冴えてるんですね。

(勿論、普通にメロディが良い曲もたくさんありますが)


このアルバムにおけるその感覚はとんでもない域に達してます。


PRINCE 『New Position』-YouTube

③「I Wonder U」


...これも短いながら美しい曲。


これはギタ―のウエンディやキ―ボ―ドのリサ

のコンビがボ―カルを取っているのでしょうか。


兎に角、プリンスは歌ってません。


このウエンディ&リサのコンビは、

プリンスを支える【The Revolution】というバンドの中でも

非常に重要で、有能なア―ティストでした。


この2人の貢献はとても大きいですし、

この2人抜きではこの80年代のプリンスの全盛期は語れません。



【Prince & The Revolution】名義のアルバムは

この『Parade』で3作目であり、

これで最後になってしまいますが、


ある意味では、この【The Revolution】というバンドと一緒に

蜜月を過ごしていた1984年~1986年は


プリンスが最も(白人の好みそうなポップな)ロックに接近していたとも云えて、


この時期だけが好きだ、という方も多いのではないかと思いますね。


その傾向も、プリンスだけの力ではなく、

【The Revolution】のバンドメンバ―の感性も手伝って起きたケミストリ―だったのだと

思います。



実際、この後もプリンスはロック的な趣向に走ったり、

正統的なポップスを目指したりしますが、


【The Revolution】と一緒にやっていた頃と

同じ様なノリのモノは出来上がらなかったし、


特に次にプリンスが創ったバンド、

【New Power Generation】は、もっともっと

R&B、ファンク、ラップ色が強く、


黒人寄りの音楽に原点回帰していく事になります。


PRINCE 『I Wonder U』-YouTube

④「Under The Cherry Moon」


...映画と同名の妖しげなバラ―ド。


お父さんとの共作みたいですね。


ここまで冒頭4曲はすべて2分台という短さ。


ここまであっという間です。


この軽さが何度でも聴けてしまう理由なんですよねぇ。


PRINCE 『Under The Cherry Moon』-YouTube

⑤「Girls & Boys」



...この曲、大好きですね。


いや、なんですかこの新しさはッ!


『こんなんアリなんですか??』


っていう曲です。


すごいアバンギャルドな曲の筈なんですが

見事にポップスとして成立させるプリンスがヤバい。


結構シンセとかチ―プなんですが、

またそこがこの場合、すごく効いているんですよね。


マイナスの美学、炸裂です。


なんなんでしょうね、この鬼気迫る感じは。


非常に素晴らしいとしか云いようがないです。


ビ―トルズの『リボルバ―』から丁度20年後に発売された今作は


まさに


【80年代のリボルバ―】


と云っても過言ではないでしょう。


PRINCE 『Girls & Boys』-YouTube

⑥「Life Can Be So Nice」



...この曲も最高ですね。

もう手放しで『天才!』と叫びたい。


前曲よりスピ―ドアップし、また違うアバンギャルドさで魅せてくれます。


もう説明不用というか、取り敢えず聴いて下さい、

という感じです。


こういう曲をこの時代にポップミュ―ジックとして発信していたとか

革新的過ぎですよ(笑)


PRINCE 『Life Can Be So Nice』-YouTube

⑦「Venus De Milo」


...「ミロのヴィ―ナス」という題名ですね。


これはピアノのインスト曲です。

レコ―ドではここでA面が終了します。

折り返し地点ですね。


PRINCE 『Venus De Milo』-YouTube

⑧「Mountains」


...これはバンドメンバ―のウエンディ&リサ

のコンビが作曲した、となってます。


このコンビはこんな素晴らしい曲まで創ってしまえるレベルなんですね。


プリンスが主体で作曲した⑤や⑥と比べると

アバンギャルド度は落ちますが、それでも

十分音で楽しませてくれます。


そう、音楽は「音」を「楽」しむ、と書きますからね。

このアルバムはほんとうに音を楽しめる作品です。


PRINCE 『Mountains』-YouTube

⑨「Do U Lie ?」



...これはフランス語で歌ってますかね。


童謡みたいな可愛い小品です。

ポ―ル·マッカ―トニ―みたい。


思いっきりフランス趣味ですが、曲で聴く限りは嫌味ではないですね。


というか、このアルバムは短い中で様々な種類の曲がビュンビュン過ぎていくので

めまぐるしいです。


でも、また聴きたくなってしまう魔力に溢れています。

PRINCE 『Do U Lie?』-YouTube

⑩「Kiss」



...出ました、真打ち。


これこそこのアルバムの目玉です。

「When Doves Cry」に匹敵する程の奇跡の名曲ですね。



これまたベ―スレス。


ギタ―のカッティングと印象的で簡素なドラム、

そしてプリンスの裏声は表現力ありすぎですよ。


プリンスは初期はずっと裏声一辺倒だったんですが、


全盛期に入ってからは地声を活かした曲を連発していたんですが、


ここに来てこんな裏声の神曲が生まれるとは...



プリンスはこの曲を一旦他人に提供しようとしたんですが、

あげた先のア―ティストがリハ―サルでやっていたアレンジにヒントを得て、


『やっぱり帰して』



って、創り直してこんなビッグヒットにしてしまったのでした。

全米1位。


しかも、「Kiss」が全米1位を獲得していた時に

2位に付けていたのは、【ザ·バングルス】という女性ヴォ―カルのバンドの曲で

「マニック·マンデー」という曲でした。


この「マニック·マンデー」はプリンスが

バングルスに提供した曲なのです。


(この曲、どことなく「Take Me With U」に似てますよね)


詰まり、プリンスの曲が全米チャ―ト1位2位

を独占していた訳です。すごい。

⑪「Anotherloverholenyohead」



...このタイトル!。


英単語をつなぎまくるスタイルはかなり斬新です。


これもポップスとしては相当変わっている筈なんですが、

ここまでで凄まじくトリッキ―な曲を聴かされ続けてきた耳には


割りと普通に聴こえます(笑)


メロディも普通にカッコイイです。


ホントにバンドとしてのグル―ヴが完全に完成していますね。


リズムに身を任せていれば40分などあっという間です。


PRINCE 『Anotherloverholenyohead』-YouTube

⑫「Sometimes It Snows In April」



...アルバムのラストを飾る足かけ7分の大名曲。


感動的なバラ―ドです。


散々アバンギャルドな曲を聴かされて、

最後に待ち構えているのがこの泣きの必殺バラ―ド。


完全敗北です



『4月に雪が降る事もある...』という印象的な歌詞ですが、

映画では主人公は撃たれて死んでしまいます。


奇しくもプリンスが亡くなったのは4月。
 

ファンの間では偶然にしては出来すぎている
と話題になりました。



PRINCE 『Sometimes It Snows In April』-YouTube


しかし、この名曲を作曲したのはプリンスではなく、


なんとウエンディ&リサのコンビです。


やはりこの2人も只者ではありません。


実際、このアルバムを最後に急にプリンスはバンドを解散させてしまい、

一人体制に戻ります。


しかも、次のアルバムをバンド体制で途中まで完成させていたのにも関わらず、

です。


しかも、その途中で放棄された幻の未完アルバム

『Dream Factory』においては、


今作以上にウエンディ&リサのコンビが活躍する内容となる筈だったのです。

(2人のソロインストが1曲ずつ収録されていたり、

2人がヴォ―カルを取る曲も増えていた)


それを全部白紙に戻したプリンス。


少なからずこのコンビに主導権を奪われるのを恐れていたのかも知れません。


【Purple Rain】の映画のシ―ンでは

プリンスとウエンディ&リサのコンビが

仲違いするというモノがありましたが、

(というか、そこがモロにピックアップされた脚本でしたが)


あの映画は脚色されているにしても、

かなり実話に近い物語だったのだと思います。


あのケンカのシ―ンはあながち演技でもなかったのかも知れませんね(笑)




プリンスは【The Revolution】が確立する前には

ジャム&ルイスのコンビも従えていた時期がありました。


しかし、こちらもジャム&ルイスがプリンスに内緒で

外部に人脈を作ってキャリアを上げようと動いた事がバレて、


プリンスはそれが原因で2人を首にしています。


ジャム&ルイスはその後、マイケル·ジャクソンをはじめ、

たくさんのア―ティストを成功に導いた名プロデュ―サ―コンビとして活躍しました。



嫉妬深い人ですね(笑) 



でも、ウエンディ&リサを遠ざけた事で

プリンスは最初期の一人密室作業の形態に戻り、


それを突き詰めた結果、

素晴らしいアルバム『Sign O The Times』

が完成する訳ですから


これも良かったのでしょう。


『Dream Factory』はネット上の動画で聴いた事がありますが、


正直、出来は『Sign “O” The Times』のほうが

イイと思います。


でも、【The Revolution】というバンドは

ほんとうに奇跡のバンドだったとも思います。



という訳で最後、だらだらと長くなってしまいましたが、



兎に角、この『Parade』はロックファンには


完璧にオススメのアルバムです



ここにはポップミュ―ジックのひとつの頂点の形が存在します。


是非、どうぞ。





で、私は長年このアルバムがプリンスのベストだと感じていたのですが、


今は正直、『Lovesexy』というアルバムのほうがもっと高みにあると思ってしまっています。



こんなに幾つも幾つも名盤があるア―ティストも

数える程しか居ないのではないでしょうか。


ビ―トルズに関しても私は『リボルバ―』を愛して居りましたが、


今は『アビ―ロ―ド』のほうが好きです。


これは歳を取った事とも関係しているのかも知れませんね。


音楽はこれだから面白いです。


年齢によって好きなモノの

印象が変化します



楽しいですね。



それでは、この辺で、


皆さんに幸せが訪れますように



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